フリーランスです。法人化したほうがいいのかな?
この悩みを解決します。
この記事を書いている僕は現在、脱サラして会社をやっていますが、これは本当に悩みました。
他のサイトでは詳しい事は書いてあるけど、「結局、自分だったらどっちがベスト?」という状態を抜け出せませんでした。
今回は重要な5つの観点で個人事業主と法人設立のメリット、デメリットを比較します。
- 現時点の貯蓄・売上状況の観点
- 税金周りの観点
- 事業運営の観点
- 各種手続きの観点
- 資金調達の観点
フリーランスが法人化する場合のメリットやデメリットが分かります。
僕の「副業時代の個人事業主」としての経験と、現在の「脱サラ後の法人経営」としての2つの経験を元に解説していきます。
結論としては、「本気なら法人設立1択」です。
理由はいくつかありますが、2023年のインボイス制度でフリーランスが取るべき対策の記事でも解説していますが、インボイス制度で個人事業主のフリーランスは痛手を負う可能性が高いです。
つまり、フリーランスが個人事業主でいるメリットが低くなります。
解決策は単純で鬼稼ぐことです。
とは言え、人により事情はことなりますので5つの観点で客観的に比較していきます。
個人事業主と法人のメリットとデメリットを比較
まず、それぞれのメリット、デメリットをおさらいします。
個人事業主・法人それぞれのメリット
双方のメリットはこれです。
個人事業主のメリット |
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法人のメリット |
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どのメリットを重視するかは結構好みです。
メリットだけで見れば法人化一択ですが、フリーランスでのんびりやりたいなら個人事業主のままでもいいかもしれません。
デメリットも見ていきます。
個人事業主・法人それぞれのデメリット
双方のデメリットはこれです。
個人事業主のデメリット |
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---|---|
法人のデメリット |
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デメリットを見ると個人事業主の厳しさが出てきますね。
個人事業主でのフリーランスは気楽さがある反面、「本気で事業を伸ばしていきたい」場合はデメリットが際立ちます。
法人のデメリットを見てみると、「とにかく面倒」という部分が大きいです。
しかしこれは、税理士やクラウドサービスで解決できる問題です。
法人設立:Freee(フリー)またはマネーフォワード会社設立
税金対策:税理士ドットコム
基本この2つで法人設立のデメリットは解消できます。
Freeeかマネーフォワードで法人開設手続き→税理士ドットコムで税理士を探して面倒な手続きを丸投げ
意外と依頼費用は安いので頼らない手はないです。
おすすめはマネーフォワードです。
フリーランスは結局どちらを選べばいいのか
個人事業主と法人のメリットとデメリットがわかったところで、結局フリーランスはどっちでやるべきか。
結論は、どこを重視するかによります。
ここからは5つの重要な観点ごとにどっちが良いかを比較していきます。
- 現時点の貯蓄・売上状況の観点
- 税金周りの観点
- 事業運営の観点
- 各種手続きの観点
- 資金調達の観点
あなたが重視する観点で判断するのがベストです。
【フリーランスは法人化すべき?】現時点の貯蓄・売上状況の観点
フリーランスで独立と言っても、人によって経済状況が異なりますね。
「自分だったらどっちがベストだろう」という人のためにこの観点で考えてみます。
- 現時点の貯蓄が240万以上なら法人設立
- 現時点の定期売上が月40万以上なら法人設立
- 自由にのんびりやりたいなら個人事業主
詳しく解説していきますね。
現時点の貯蓄が240万以上なら法人設立
240万の根拠は「生活費月30万×半年+諸費用60万」です。
各自の生活レベルによって調整すればOKですが、だいたい200万前後の貯蓄があるなら法人設立していいかなと。
理由は2つで
- 半年あればそこそこ成果を出せる
- 資金調達で自己資金にレバレッジを掛けられる
これです。
240万あれは半年無収益でも事業が出来ます。
フリーランス独立の場合ある程度、収益ベースが出来てる場合が多いので、尚更です。
重要なのは二つ目で、「資金調達観点」において自己資金比率が重要指標となります。
独立したての自己資金があるうちに資金調達をしておくと安心です。
現時点の定期売上が月40万以上なら法人設立
月40万の根拠は「生活費月30万+諸経費10万」です。
1人でやるなら月40万円あれば、ほぼ手元の現金を減らす事なく事業を進めていける状態です。
つまり、本気で事業に取り組めばもっと事業を拡大出来る可能性がある状態です。
後ほど「事業運営観点」で詳しく解説している恩恵を活かせるので、法人設立が良いと考えます。
自由にのんびりやりたいなら個人事業主
自由にやりたいなら個人事業主でOKです。
面倒な手続きもほぼ無いし、やめたくなったら簡単に出戻りすることもできます。
ただ、個人事業主は思っている以上に世知辛いのでそれは念頭に置きましょう。
【フリーランスは法人化すべき?】税金周りの観点
一番悩むし、小難しいのは税金周りの「どっちがおトク論」です。
今回はできる限り簡単にわかるように情報を厳選しました。
- 見込み売上規模が695万以上なら法人がお得
- 個人事業主から法人化すれば消費税の支払猶予期間が伸びる
- 経費が認められるのは圧倒的に法人が有利
- 社会保険は負担が増えるけど有利なのは法人
- 【裏技】社会保険料の融通を効かせる方法
詳しく解説していきます。
見込み売上規模が695万以上なら法人がお得
売上規模695万以上の根拠は「所得税の税率23%ライン」です。
所得税の考え方が個人事業主と法人で違うのでおさらいします。
- 個人事業主=累進課税:収入が上がると税率が上がる
- 法人=固定税率:収入に関わらず税率が一定
今回はわかりやすく「売上規模」と表現していますが、正確には所得税の計算対象は違います。
- 税金の計算対象=売上-諸経費
これが年間695万以上になると法人の固定税率制のメリットが発動します。
実効税率(地方税、住民税、事業税を含む実質的な負担率)で考えるとわかりやすいです。
個人事業主の実効税率 | 17.2%~40.8% |
---|---|
法人の実効税率 | 24.8%~32.1% |
実効税率が個人事業主より法人がおトクになるのは「所得800万円以上」です。
こう聞くと「800万までなら個人事業主の方がトクじゃね?」と思うかもしれません。
実際は違います。
法人は経費として認められるものが多いので、所得800万以上じゃなくても「実質的に節税できる」場合が多いです。
ぶっちゃけ、所得330万以上なら個人と法人の所得税の税率の差はわずか3%です。
(個人事業主で収入330~695万なら所得税率は20%)
3%の差の年間インパクト的には約20万程度の差です。
約20万程度の差は節税や他で解説しているメリットで十分ペイできるレベルです。
ごちゃごちゃしてきたのでまとめます。
- 所得税だけで考えると「695万円ライン」
- 実効税率で考えると「800万円ライン」
- 迷ったら「330万円以上」のラインで法人化ok
個人的な意見ですが、所得税の税金で法人化するかどうかを悩むのはぶっちゃけ無駄です。
理由は「利益出しまくれば法人が100%得をする」からです。
本気で取り組むなら売上に関わらず法人設立でOKですよ。
個人事業主から法人化すれば消費税の支払猶予期間が伸びる
個人事業主も法人も事業開始から2年(2期)まで消費税が免税される場合があります。
ちなみに消費税は「前々年度の売上1000万以上の事業者」が支払い対象のため、この2年猶予が発生します。
この制度を利用して
個人事業主2年→法人2年=合計4年
こんな感じで消費税の支払い猶予期間を伸ばして節税することもできます。
2020年1月時点では消費税が10%なのでこの恩恵は大きいですね。
ちなみに支払い猶予があるということは、税込金額で顧客からお金をもらってもその消費税分が懐に入るという事です。
ラッキーですね。
経費が認められるのは圧倒的に法人化が有利
個人事業主より法人の方が経費として認められる範囲が段違いです。
個人事業主では認められない法人だけの経費はこれです。
- 社宅家賃(自宅事務所の家賃)
- 出張手当
- 代表者の通勤手当
- 生命保険料が全額経費
- 退職金も経費
法人化すればこれに加えて、「損益通算」ができます。
損失も経費にできることから、税金の計算対象の収益を減らし、節税になります。
社会保険は負担が増えるけど有利なのは法人化
フリーランスとして独立すると社会保険の不安があります。
一人でフリーランスとして独立した場合で考えます。
- 個人事業主の社会保険
- 法人の社会保険
=「国民健康保険」+「国民年金」
=「協会けんぽor組合健康保険」+「厚生年金」
待遇が良い保険はやはり法人の社会保険です。
問題は費用面ですね。
社会保険料はどのように決まるのか。
答えはこれです。
- 個人事業主=前年度年収から算出
- 法人=自分の役員報酬額から算出
これが大きなポイントになります。
サラリーマン時代の年収が高い人は、独立後の社会保険料はサラリーマン時代の前年度収入を元に計算されます。
会社員は社会保険料を「労使折半」で支払っています。
独立すると「労働者」と「使用者」の両方が自分になります。
単純計算で「今までの2倍の金額」が社会保険料だと思ってもらってOKです。
給与明細を確認して「社会保険料」を2倍にしたら驚愕したと思います。
これが独立後の負担です。
法人化した場合、会社設立時点で「自分の役員報酬」を自分で決めます。
この時に自分で決めた役員報酬を基準額にして保険料を算出します。
これが次項の裏技のポイントです。
【裏技】社会保険料の融通を効かせる方法
独立後にしょっぱなから法人を設立する一番のメリットかもしれません。
社会保険の計算対象となる基準額は「自分で決めた役員報酬額」なので、「役員報酬額を低く設定する」ことで保険料の負担を減らせます。
例えばあなたがサラリーマン時代の年収が500万だとします。
個人事業主として独立すると社会保険料の負担は大体「月10万くらい」です。
法人設立し、自分の役員報酬を年間「96万円」に設定したとしましょう。
だいたい月給8万円くらいですね。
その場合、社会保険料の負担は「月2万4千円くらい」です。
これで社会保険料が年間約90万円くらい節約できます。
役員報酬を自分で決められるというのはそういうことです。
注意点もあります。
- 役員報酬はその事業年度中の変更不可
- 配偶者がいて、配偶者より年収が低いと扶養に入れられない
子供がいる場合、子供は年収0円なので自分の扶養に入れられますが、サラリーマン時代に配偶者を自分の保険に入れていた場合は、配偶者の方は自分で社会保険に別で入るしかないので注意です。
【フリーランスは法人化すべき?】事業運営の観点
フリーランスでも、個人事業主なのか、法人なのかで事業の進めやすさに大きな差が生まれます。
- 法人相手の商売なら法人設立で安心
- 事業をスケールしやすいのは法人
- ブログ・アフィリエイトなどのネットビジネスなら節税観点を優先
- 法人限定のサービスが世の中には結構ある
この4つの視点で深掘りします。
法人相手の商売なら法人化すると安心
自分の事業のお客さんが「法人」なのであれば、個人事業主で独立するのは不安が残ります。
観点は2つです。
- 法人との取引しか受け付けない会社がある
- 個人事業主はナメられて、やたら値切られる
つまり、営業効率や案件成約率、利益率が全然違うということ。
そんなバカなと思うかもしれませんが、この影響は大きいです。
サラリーマン時代のお客さんはあくまで「あなたの会社」と取引しています。
個人事業主とは取引しない会社も多数ありますので独立後に頼りにしていた会社と取引ができないなんてことも発生しかねません。
個人事業主は顧客からナメられて値切られまくるのもデメリットです。
僕はこれを副業している時(個人事業主扱い)に痛感しました。
起業したての頃は各方面からナメられます。
「会社としてやっておりますので」
この一言で割と値切り交渉やナメられる場面で面倒な相手を一蹴できたりするので法人格は強いです。
事業をスケールしやすいのは法人
フリーランスとして独立したら自由に暮らすものありですが、どうせなら事業拡大も視野に入れてみると面白いです。
事業拡大をするには、一人では限界があります。
- 一緒に事業をやる仲間を募る
- 新しい人材を採用して組織を作る
今の自分の事業を仕組み化していくと売上を大きく伸ばすことができます。
例えば、
- ライティングで独立→ライターを集めて外注組織を作る
- YouTuberで独立→編集者や企画担当を雇ってコンテンツ作成に注力する
- 動画編集で独立→営業を採用して案件獲得数を増やす
- ブログで独立→ライターを雇って教育してサイト数を増やす
- 営業代行で独立→営業マンを増やして営業組織を作る
- プログラミングで独立→制作を分業してチームで仕事をする
一人では荷が重いプロジェクトもチームで仕事をすれば、それぞれの得意分野を活かして事業として拡大する可能性が出ます。
個人事業主では、「雇用」や「契約」周りで法人よりも利便性に劣りますので法人が強いです。
ブログ・アフィリエイトなどのネットビジネスなら節税観点を優先でも可
ブログやアフィリエイトは個人事業主としてやっていてもそこまで支障はないです。
理由は3つ。
- 人を雇わなくても仕事が回る
- 経費が掛かる業務がほぼない
- 損失がでる場面があまりない
法人の強みを活かす場面が少ないので個人事業主としてスタートし、前述の売上ラインの判断で法人化し、消費税の支払い猶予の恩恵を長期で受ける方がいいです。
メディアの集客力を活用して営業に力を入れて広告案件を獲得し、利益を伸ばすなら法人化もありです。
- 対法人のやりとりが増える
- 売上が1000万を超える
- 業務を分担して楽をしたい
こんなニーズがあるなら法人化を検討していくといいです。
法人限定のサービスが世の中には結構ある
社会は恐ろしいくらいに法人有利な環境です。
- 法人しか参加できないイベント
- 法人しか申し込みできないサービス
- 法人限定の割引
- 法人代表者だけが招待される情報交換の場
- 法人相手にしか紹介されない案件
やってみてわかる恩恵が世の中にはたくさんあります。
世界を広げるという意味でも法人経営は経験になりますね。
【フリーランスは法人化すべき?】各種手続き・費用の観点
フリーランスがまず最初にブチ当たるのはこの各種手続きかもしれません。
- 法人設立は費用が掛かる
- 法人設立手続きは想像以上に面倒
- 【解決策】税理士が安く請け負ってくれる
順番に比較していきます。
法人設立は費用が掛かる
フリーランスとして独立し、法人を設立する場合は費用がかかります。
株式会社なら設立費用は大体21万円くらいです。
その他にも
- 会社のハンコを3種類買う
- 登記簿を複数枚取得する
- 印鑑証明を複数枚取得する
- 住民票を複数枚取得する
- 各役所に何度も行く交通費
こんな感じで諸経費が地味に掛かるので、合計で28万円くらいは覚悟しておきましょう。
個人事業主なら市役所に開業届を出せばそれで終わりです。
あとは屋号のハンコがあればOKですかね。
法人設立手続きは想像以上に面倒
法人設立は自分でもできますが、コスパ悪いのでやめましょう。
どれくらい面倒かと言うと、
事業が2ヶ月くらい何もできなくなる
これくらいは平気で掛かります。
- 法人設立手続き
- 各種役所への届け出
- 社会保険の手続き
- 税金周りの手続き
- 事業用の口座開設
とくに法人口座開設は意外とつまずくので注意です。
在職中に済ましておくのが得策です。
【解決策】クラウドサービスや税理士で完結可能
面倒な手続きも簡単にしてくれるサービスが豊富にあります。
こんな感じで簡単に書類を作成する仕組みがあるので使わない手はないです。
【フリーランスは法人化すべき?】資金調達の観点
「フリーランスは資金調達不要じゃないの?」
そう考える人もいるかもしれません。
僕は「フリーランスも資金調達したほうがいい派」です。
理由は”安心”だからです。
実際、フリーランスを支えるボス的存在の「ランサーズ」も「フリーランスレンディング」というフリーランス向けの少額の資金調達サービスを開始しています。
これはフリーランスの先輩たちは資金調達の必要性に迫られる場面が観測されているともいえます。
- 個人事業主でも可能だけどほぼ無理
- 法人なら信用獲得がしやすい
- 法人の方が資金調達額を上げやすい
これらの視点で考えていきます。
個人事業主でも可能だけどほぼ無理
フリーランスの個人事業主も資金調達は出来ます。
主な調達先は国が運営している「日本政策金融公庫」になると思います。
個人事業主でも話は聞いてくれますが、調達可能額は300万が限度かなと。
個人事業主は「お財布が個人のもの」として銀行に見られるので、融資も「個人的な借入」みたいな感じになり、結構シビアです。
クラウドファンディングを使う手もありますが、それなりにアイデアとプロジェクトが必要になるので、今回の比較趣旨とはズレるのでスルーします。
法人なら信用獲得がしやすい
法人は融資の獲得がしやすいです。
法人の場合、お財布が「会社のもの」として銀行が見るからです。
銀行から見れば、個人事業主より「個人的な支出への融資」をしてしまうリスクが下がるので法人は交渉を通しやすいです。
地域経済の活性化推進の追い風もあり、中小企業が事業を始める支援の一貫として日本政策金融公庫が事業として力を入れているので資金調達のハードルが下がっています。
ちなみに調達が最も簡単なタイミングは創業直後です。
理由は判断材料が少ないからです。
決算書が無い「創業直後」は
- 創業計画書
- 収益計画表
- 自己資金
- 代表者の金融情報
が主な判断材料になるので、融資ジャッジのマイナス要素が少ない状態です。
このタイミングを逃すと、「実績」が判断材料になるので厳しいです。
法人の方が資金調達額を上げやすい
フリーランスで独立し、法人を設立すればチームとして事業を展開していく未来を描けます。
その場合、仲間の活動資金や外注費などの経費が必要です。
法人を設立するメリットとして、「事業計画書を大きく描ける」ことが挙げられます。
事業計画の大きさは夢の大きさですね。
個人事業主の場合は、「一人の事業計画」であることに対し、法人は「組織的な事業計画」を作ることが可能です。
- 人材の採用費や人件費
- 外注費
- オフィス用品などの設備資金
- 販促広告費
このような事業運営に欠かせないものを揃えるための資金計画を作るができます。
大体調達可能額は「自己資金の5倍〜10倍」程度が相場と言われており、フリーランスが独立直後の最も自己資金が多いタイミングで法人を設立し、資金調達をしておくことで潤沢な事業活動資金を確保できます。
脱サラ後の安心はお金でしか買えません。
フリーランス生活を楽しもう
以上、5つの観点でフリーランスが独立する際に個人事業主にするべきか、法人にするべきかを考えてきました。
それぞれ状況が異なりますが、今回の記事でだいぶ「自分の状況だったらどちらがベストか」を検討できる材料になっていると思います。
では今日はこの辺で。